エビデンス

26. 礼儀正しい嘘は、早い段階で出現する!?

adash333

22. 叱られないための嘘は成長とともに減る
25. 個人的な利益のための嘘は成長とともに減る
に引き続き、嘘の話題です。
 
 
今回の嘘は、「礼儀正しい嘘」です。
「今日のご飯頑張って作ったんだけど、美味しい?」
「・・・うん、美味しいよ」
っていう感じの嘘ですね(笑)
 
 
前回同様、タルワール氏らによって行われた、2017年の報告から。
北米の大都市で、127人の子どもたちを対象に行われた研究です。

【方法】 


1回目の調査は、子どもが3−6歳のときに行い、およそ2年後(平均2.2年後)に、同じ子どもを対象に2回目の調査を行いました(5−8歳)。
 
1回目のテスト:
セッションの最初に、子どもは、欲しい賞品と欲しくない賞品を分類しておきます。
認知的活動を行った後、実験者が、「よく頑張ったから、賞をもらったよ」と言い、実験者のお金で賞品を買ってあげようと伝えます。
子どもに、欲しくない賞品を授与した後、その賞品が気に入ったかどうかを質問します。
 
 
2回目のテスト:
子どもは家を描いた5枚の絵をそれぞれ評価させられます。
実験者1は、2番目に低く評価された絵を一番上にして置きました。
実験者1は、子どもに休憩にするから遊んでいていいと伝え、実験者2が一緒に遊ぶために来ると言い、自分は部屋を去りました。
実験者2がやってきて、遊び始めましたが、一番上に置いてある絵に気づいて、「これは私が描いた絵だよ。どうしてこんな評価になったの?」と子どもに聞きます。

【結果】


(1)両方の調査を受けた119人のうち、
・48人(40%)は1回目も2回目も礼儀正しい嘘をつきました。
・25人(21%)の子どもは、1回目の調査では本当のことを言いましたが、2回目の調査では嘘をつきました。
・22人(19%)の子どもは、1回目の調査では嘘をつきましたが、2回目の調査では本当のことを言いました。
・24人(20%)の子どもは、1回目も2回目も本当のことを言いました。
最も多かったのは、2回とも礼儀正しい嘘をついたパターンでした。
 
(2)1回目と2回目で嘘をつくかつかないかの決断にはわずかに関連が認められました。
 
→ これにより、子どもが、成長後も礼儀正しい嘘を一貫してつくことを決断すると考えられました。
 
(3)全体として、1回目と2回目で嘘をついた子どもの割合に有意差は認められませんでした。
 
→ この結果からは、礼儀正しい嘘は、今回検討対象とした年齢以前の発達段階で出現する可能性が考えられました。
 
 
小さな子どもでも、多くの子が礼儀正しい嘘をつくのですね。
「美味しくない料理のはずなのに、どうして『美味しい』なんて言ったのかしら?」などと悩む必要はなさそうですね。

参考文献

Victoria Talwar, Carving Pinocchio: Longitudinal examination of children’s lying for different goals, 2017 (エビデンスレベル★★☆☆☆)

ABOUT ME
えびちゃん
えびちゃん
6歳と3歳の二児の母。 夫婦ともに東大理三出身、東大医学博士。 「エビデンスに基づく教育」で、親も子どももハッピーになれる子育てを応援します。
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