39. いじめに関与する家族の特徴

「いじめ」は人生を左右してしまうほどの深刻な問題です。
我が子には、できればいじめに遭って欲しくないし、いじめる側にもなって欲しくない。
でも、子どもがいじめたりいじめられたりしてるって、気づけるものでしょうか?
今回は、「いじめ」についての論文を読んでみたいと思います。
ホルト氏が、アメリカ合衆国で行った調査を2009年に発表したものです。
方法
・参加者
参加者は205人の小学5年生の子どもとその親/保護者。
111人の子どもが女子で、89人が男子、5名は性別不明。
親/保護者の91%が女性で、88%が母親であった。
生徒が住んでいる場所は、人口約10万人の都市でした。犯罪統計によると、このコミュニティの暴力犯罪率は全国平均の約 2 倍です。
・いじめ行為の評価
イリノイ大学の 9 項目のいじめ尺度 (UIBS; Espelage & Holt, 2001) を使用して、いじめ、社会的排除、悪口、噂の拡散などのいじめ行為を評価しました。
・同級生からのいじめの評価:
イリノイ大学の 4 項目被害評価尺度 (UIVS; Espelage & Holt, 2001) を使用して評価されました。
・少年被害アンケート
参加者は、広範囲の被害を評価する 33 項目のスクリーニング手段である、少年被害アンケート (Hamby, Finkelhor, Ormrod, & Turner, 2004) に回答しました。
・親/保護者(以下、親と表記)の調査
4つの領域にわたる項目に回答しました。
(1)いじめに対する保護者の態度(11項目)
親が「1」(強くそう思わない)~「4」(強くそう思う)の段階で回答。
例:「少しからかっても、誰も傷つけません」
(2)家族の特徴と機能 (12 項目)
親は、「1」(まったくない) から「4」(よくある) の範囲で回答。
例: 「自分の子供がどこにいるかわかりません」、「家族のメンバーが互いに批判し合う」
(3)いじめっ子または被害者としての関与 (2 項目)
親は「はい」または「いいえ」と回答
例: 「自分の子供が学校で他の子供にからかわれたり、からかわれたりしているのではないかと疑ったり、気付いたりしたことがありますか?」
(4)いじめへの関与に対する親の反応 (2 項目)
例えば、親が自分の子供がいじめに関与していることに気付いていた場合、これに対して何をしたかを報告。
結果
(1)頻度
・88%の親が、からかうことは子どもを傷つけると答えた。
・いじめに対処する方法について、親と子どもがいじめを自分で解決する必要があると答えた親はほとんどいません (9%) が、約3分の1(37%) が親の介入なしに教師と校長が対処する必要があると回答しました。親の過半数 (82%) は、子どもはいじめに対して厳しく罰せられるべきだと考えており、ほとんどすべての親 (93%) は、いじめに対処する最善の方法は、積極的な交流を奨励することであると述べています。親が子どもがいじめにどのように対応すべきだと考えているかという点では、約3分の1(37%) が子どもは反撃すべきであると答え、3分の1は子どもがいじめっ子と関わらないようにすべきだと答えました (30%)。親の過半数 (88%) は、子どもは自分自身のために立ち上がるべきだと感じていました。
(2)いじめ被害と親の対応についての親子のコミュニケーション
・学校でからかわれたり、いじめられたりしたと答えたほとんどの子ども (86%) が誰かにそのことを話し、そのうち 61% が両親に話しました。
・子どもが学校でからかわれたりいじめられたりしているのではないかと疑った保護者は、さまざまな反応を示しました。ほとんどの親 (79%) がそのことについて子どもに話しました。 45% が子どもに自分のために頑張るように言いました。 44% が子どもの先生にそのことについて話しました。 45% がそのことについて校長に話しました。 10%が子どもをカウンセラーに連れて行きました。 14% は、関係する他の子どもの親と話しました。 44% が、からかわれないようにする方法を子どもに教えました。また、27% が自分の子どもに反撃しないように言いました。
(3)いじめの実行と谷の対応に関する親子のコミュニケーション
・学校で他の子供たちをからかったり、からかったりしたと報告した子供たちの大半 (69%) は、家庭でこれが原因でトラブルになったと述べています。
・自分の子どもが学校で他の子どもをからかったりいじめたりしていると疑った親のほとんどは、何らかの行動を起こしました。最も一般的な回答は、そのことについて子どもに話す (55%) および/または子どもに他の子どもをからかうのをやめるように言う (52%) でした。他には、子どもを罰する (24%)、子どもの先生と話す(24%)、子どもの校長に話す(17%)、子どもをカウンセラーに連れて行く(10%)がありました。
(4)親子の認識一致
・全体として、若者の 59% が学校でからかわれたりしたことがあると答えましたが、親の 41% は、自分の子供が学校でからかわれたりしたと考えていました。サンプルの約 10% は、子どもと親の両方が子どもがからかわれたと報告し、サンプルの 53% では、子どもと親の両方が子どもがからかわれていないと報告しました。
・サンプルの約 5% は、親はからかわれていないと報告し、子どもだけ、からかわれたと報告しました。
・サンプルの 31%で、子どもがからかわれていないと報告し、親は子どもがからかわれたと報告しました。
・子どもの 31% が、他人をからかったりしたことがあると答えたのに対し、親は11% だけが、自分の子どもが他人をからかったりしたと考えていました。
・他人をからかったと報告した子どものうち、自分の子どもが他人をからかったと答えた親はわずか 2% でしたが、親の 11% は自分の子どもが他人をからかったとは信じていませんでした。
・9%のサンプルで、親は、自分の子どもが他人をからかったと報告しなかった場合でも、自分の子どもが他の人をからかったと報告しました。
・サンプルの大部分 (78%) で、親と子どもの両方が、子どもが他人をからかうことに関与していないと報告しました。
(5)家族の特徴といじめの関係
・家族の社会経済的ステータスは、いじめの加害や被害とは関係がありませんでした。
・他の若者と比較して、多くのいじめっ子は母親だけの家に住んでいました(33% vs 15%)。
・子どもたちが自分自身の被害を報告するような家は、家族の批判のレベルが高く、規則が多く、子供への虐待が多いという特徴がありました。
・子どもが加害者であると報告するような家は、親が子どもの居場所を知らないことが多く、子どもの虐待や家庭内暴力が発生しているという特徴がありました。
参考文献
Melissa K. Holt , Parent/Child Concordance about Bullying Involvement and Family Characteristics Related to Bullying and Peer Victimization, 2009 (エビデンスレベル★★☆☆☆)