29. 親がけんか仲裁のトレーニングを受けると、子どもはけんかを建設的に解決する

きょうだい喧嘩、悩ましいですよね。
早く解決して欲しいので介入したいけど、親が介入すると、子どもたちは自分で解決する力が付かないのではないかと心配になったり。
そのうち、年下の方が泣きついてきて、つい年上の方をたしなめたり。
ひとつ解決したと思ったら、5分後にまた別の喧嘩が勃発して、親が強制的に終了させたり。
親は一体、子どものけんかにどう向き合えばいいのでしょうか?
そんな悩みに対するヒントを探してみました。
今回は、2007年にカナダのスミス氏によって報告された論文をご紹介します。
【方法】
5歳から10歳の子ども(下の子が平均6.5歳で、上の子が平均9.1歳)をもつ48家族を対象とした。
(1)1回目のセッションで、両親と2人の子どもは質問に答えた。
(2)その後およそ10日後に、自宅できょうだい喧嘩を記録するためのチェックリストの記録の仕方を説明された。仲裁グループの親は、その後、1.5時間の仲裁トレーニングを受けた。(コントロールグループの親は受けていない)
(3)およそ50日後、最後のセッションで、両親と2人の子どもはまた質問に答えた。
【仲裁トレーニング】
・仲裁の役割
・子どもたちは、けんかの解決に関する最終決定を下す責任を負わなければならないということ
・仲裁には以下の4つのステージがあること。そして、それを子どもたちに紹介し、それを介して子どもたちを導く方法
(1)基本ルールを定め、それに対する子供の同意を得る
(2)子どもたちにそれぞれ何が起こったのかを説明し、論点と共通点を特定するように言う
(3)子どもたちに、問題についての自分たちの目標や気持ちについて話し合うよう促す
(4)けんかの解決策についてブレインストーミングを行うように促し、子どもたちが実際に自分の考えを確認するのを助ける
・両親には、積極的に傾聴する、熟考する、リフレーミングするなどの積極的なコミュニケーションスキルを使用して、子どもの成長を促す方法についての情報も提供されました。
【結果】
(1)全部で236件のけんかの記録があり、どちらのグループでも、父親より母親がより多く介入しました。グループ間で、父親と母親の差はありませんでした。
(2)仲裁グループの子どもはコントロールグループと比べて、より多く不平を言いましたが、ポジティブな行動も多くとりました。彼らは穏やかに話し、視点について話し合い、聞き、説明し、謝罪し、より多くの解決法を提案しました。
(3)仲裁グループは、けんかを妥協や和解で解決することが多くありましたが、コントロールグループは、勝敗がついて終わったり、あるいは解決せずに終わることが多くありました。さらに、仲裁グループは子どもたちだけで、あるいは親の助けとともにけんかを解決することが多くありましたが、コントロールグループでは、親が解決することが多くありました。
(4)仲裁グループの子どもはコントロールグループに比べて、交渉のプロセスについてより多く語り、問題を特定しました。コントロールの子どもは仲裁グループの子どもに比べて、よりきょうだいを非難し、自分が正当であると主張しました。
(5)仲裁グループの子どもは、コントロールグループに比べてきょうだいの視点をより正確に特定しました。
(6)4つのストーリーで「なぜ子どもたちはそのように同意しないのでしょうか?」という質問を行い、適切な回答に対して点数を付けましたが、仲裁グループの子どもは、コントロールに比べて、より高いスコアを得ました。下の子に関しては、2つのグループで点数に差はありませんでした。
(7)4つのストーリーで「彼らがそのように意見を異にすることがなぜ理にかなっているのですか?」という質問を行い、適切な回答に対して点数を付けましたが、仲裁グループの子どもがより高いスコアを得ました。こちらは、上の子も下の子もコントロールより高得点でした。上の子は、下の子よりも、なぜ異なる解釈が理にかなっているかの説明がよりよくできました。
→ 親の仲裁トレーニングは、子どもの対立に対する理解と対立での関わり方に有益な効果をもたらしたようです。
2014年にロス氏による論文でも、3歳半から11歳の子どもを対象に親の仲裁トレーニングの効果を検証していますが、同様の結果を報告しています。
親が適切にこどものけんかを仲裁することが大事なのかもしれませんね。
仲裁の仕方についてしっかりと習熟したいものです。
参考文献
Julie Smith, Training Parents to Mediate Sibling Disputes Affects Children’s Negotiation and Conflict Understanding, 2007 (エビデンスレベル★★☆☆☆)
Hildy S. Ross, Parent Mediation Empowers Sibling Conflict Resolution, 2014 (エビデンスレベル★★☆☆☆)