23. 体育の授業を増やすと、国語と算数の成績が上がる

小学生が国語や算数の成績を上げたいなら、体育の授業を増やすとよいそうです。びっくりですね。
スウェーデンでは、1998年頃から、小学校で毎日、体育(PE: physical education)の授業を行うというブンケロプロジェクト(Bunkeflo Project)が開始されました。
Ericsson(エリクソン)氏らは、2008年、以下の論文を発表しました。
小学1年生(n=251)を1997年入学のGroup3と、1998年入学(Group2)、1999年入学(Group1)の3群に分けて、
●体育の授業が1週間に5回(計225分)のグループ(体育授業時間が長い群、Group1, Group2)(合計152名)
●体育の授業が1週間に2回(計90分)のグループ(コントロール群、99名)
としました。上のグループは、必要があれば、さらに1週間あたり1時間の「運動トレーニング」を追加しました。
そして、小学1年生の開始時と、小学2年生と小学3年生になったときの、2つのグループの
– 運動能力 motor skills
– 注意力 attention
– 学業成績 academic achievements
を比較しました。
その結果
(1)小学2年生の時点では、運動能力と注意力の相関係数(Spearman’s rank correlation)が0.37であり,明らかな正の相関関係が認められた
(一般的には絶対値が0.3以上ある場合に,2つの変数に相関関係があると判定します.)
(2)体育の授業時間が長い群と、コントロール群では、注意力に差は、ほとんど認められませんでした。
(3)小学2年生の時点では、体育の授業時間が長い群の方が、コントロール群よりも、国語と算数の成績が高い結果となりました。
特に、国語では、書く能力(writing)と読む能力(reading)が、2群で差が大きい(「体育の授業時間が長い群」の方が成績が良い)傾向にありました。
また、算数では、空間認識能力、数の概念・思考能力が、2群で差が大きい(「体育の授業時間が長い群」の方が成績が良い)傾向にありました。
実験としては、ランダムに2群に分けていないこと(入学した学年で、体育の授業時間が1週間で5回+αの群と、1週間で2回の群に分けている)など、いろいろ問題点はありますが、結論をおおざっぱに言うと、
「小学校で体育の授業を1週間に2回から、5回に増やすと、1年後の児童の国語と算数の成績が上昇する」
となります。ヨーロッパでは、体育の授業は1週間に2回では足りず、1週間に3回以上行うべきという指針を出しているそうです。
なお、日本の小学校は、年間35週で、小学1年生の体育の授業が年間102コマです[https://hugkum.sho.jp/67397]から、およそ1週間に3回の体育の授業があります。ヨーロッパと同じですね。もし1週間に5回、約1時間の運動をするとなると、1週間に2日、1時間程度、こどもと一緒に公園に行って、運動をして遊ぶ時間を作ってあげると、国語と算数の成績がUpするかもしれません!子供も喜んで、一石二鳥かもしれません!
参考文献
Ingegerd Renate Ericsson, Physical activity and learning in the Swedish Bunkeflo project: evaluation of motor skills training in compulsory school, 2013 (エビデンスレベル★★☆☆☆)
Ingegerd Renate Ericsson, Motor skills, attention and academic achievements. An intervention study in school years 1–3, 2008 (エビデンスレベル★★☆☆☆)