7.根拠のない自信があっても学力は向上しない

アメリカのカリフォルニア州では、1980年代以降、「子どもたちの自尊心を高めれば、学力や意欲が高まり、反社会的行為を未然に防止することができるのではないか」という仮説のもと、大規模な研究プロジェクトがたちあげられましたが、上記の仮説を肯定する有力な科学的根拠はほとんど示されませんでした。
それどころか、バウマイスター氏らが過去の研究をまとめて統計をとったところ、上記の仮説は間違っており、
・子どもの自尊心を高めても学校の成績は上がらないばかりか、逆に悪くすることもある
・子どもの自尊心が高くても、反社会的行為を抑制することはできない(女性の過食症は抑制する)
ということが明らかになりました。
つまり、成績がよい子どもの自尊心が高くなっている、という因果関係が成り立っているだけで、その逆は真ではなかったのです。
また、これは学会でのポスター発表ですが、フォーサイス氏らは、以下のような実験結果を報告しています。
フォーサイス氏は、最初の試験で成績の悪かった学生たちをランダムに2群に分けて、
(1)宿題+自尊心を高めるメッセージを送る(やればできるよ群、処置群)
(2)宿題+事務連絡を送る(コントロール群)
としました。その結果、「自尊心を高めるメッセージを受け取ったグループ」は、コントロール群と比べて期末試験の成績が有意に低かったとのことでした。
つまり、根拠のない自信は、成績向上には役立たなさそうなので、こどもにむやみやたらと「あなたはやればできる!」と繰り返すのは、あまりお勧めできなさそうです。
参考文献
中室牧子, 「学力」の経済学, 2015 (エビデンスレベル★☆☆☆☆)
Forsyth, D. R, Kerr, N. A., Are adaptive illusions adaptive?, 1999 (エビデンスレベル★☆☆☆☆)
Roy F Baumeister, Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles?, 2003 (エビデンスレベル★★☆☆☆)