12.幼児教育の質を上げると、こどもの「生きる力」=「非認知能力」がアップする

ペリー幼稚園プログラムという、「エビデンスに基づく教育」界隈では超有名な実験があります。
低所得のアフリカ系アメリカ人の3-4歳の子どもをランダムに以下の2つのグループに分けました。
(1)児童心理学などの専門家の幼稚園の先生による、超少人数制の質の高い就学前教育+家庭訪問を受けたグループ(エリート教育群、処置群、58人)
(2)上記の教育を受けなかったグループ(普通群、コントロール群、65人)
そして、その後、6歳、19歳、27歳、40歳のときに追跡調査を行いました。
その結果、「質の高い就学前教育」を受けたグループ(エリート教育群)はコントロール群と比べて、
・高校卒業率が高く、
・持ち家率が高く、
・40歳時点での所得が高く、逮捕率が低い
という結果となりました。たった3歳から4歳の2年間での教育で、大人になってからの所得などに差が出てしまったのです(L. Schweinhart. 2005)。
研究者たちは、この2つのグループの差は何なのかと調べました。
IQについては、4-5歳では2群にやや大きな差があった(エリート教育群の方が高かった)のですが、8歳前後では両群の差がなくなってしまいました。
「エリート教育群」で大人になってからも高かったのは、「非認知能力」(非認知スキル、生きる力)と呼ばれるものでした。
「非認知能力」とは、意欲や忍耐力など、「認知能力」以外の能力を言います。
「認知能力」とは、学力やIQなど、知能検査で測定できる能力です。
「非認知能力」は、知能検査では測定できませんが、心理学的な方法を使って、数値化することができるとされており、具体的には、
・やり抜く力(GRIT)
・粘り強さ
・好奇心
・誠実さ
・自制心
・楽観主義
・ストレスにも対処できるだけの弾力性(レジリエンス)
などがあります。
つまり、3-4歳は、子育てで非常に大事な時期であり、「非認知能力」を上げるような質の高い教育をしたいところです。
具体的な方法としては、https://dora-kids.shopro.co.jp/manabi-door/2020/07/post-11.htmlを見ますと、たとえば、
(1)子どもをまるごと受け止める
(2)いろいろなあそびやお手伝いを日常的に行う
(3)子どもの好きなことをさせる
などのようです。
5歳過ぎてからでも悲しむことはありません。多くの「非認知能力」は、大人になってからも伸ばすことができるというエビデンスが豊富にあります。
参考文献
中室牧子, 「学力」の経済学, 2015 (エビデンスレベル★☆☆☆☆)
James Heckman, Rodrigo Pinto, Peter Savelyev, Understanding the Mechanisms through Which an Influential Early Childhood Program Boosted Adult Outcomes, 2013 (エビデンスレベル★★★☆☆)